本文は ファシリテーター Advent Calendar 2019 の7日目の記事です。
ファシリテーター Advent Calendar 2019 – Adventar
ファシリテーターに関する知見を共有するアドベントカレンダーです。
みなさんこんにちは、稲野です。私はアジャイルコーチをやっていますが、そんな仕事柄支援先ではしばしば以下のような要望があり相談会(あるいはそれに近いもの)を開くことがあります。
- これからスクラムを始めるにあたり自身のロールについて細かいところを確認したい
- 他のチームではどのようにやっているのか意見交換や悩み相談をしたい
- アジャイルやスクラムの疑問や悩みをコーチに質問してみたい
このような時、私はLean Coffeeをちょっとアレンジした進め方をよく用います。簡単にできるし便利だなぁと実感しているので、ここで紹介してみます。
あ、Lean Coffeeをご存知の方は大体「知っとるわ」という内容なのでごめんなさい(先手を打つ)
用意するもの
- ふせん
- ペン
- ホワイトボード or ふせんを貼れる壁などのスペース
- BGMを流せる環境(雰囲気作り大事)
進め方
ざっと以下の流れで進めていきます。
- チェックイン
- バックログ作成とカンバン用意
- バックログをひとつずつ着手
- 議論を開始する
- 続行の要否を決める
- (続行不要であれば)トピックを終了する
- 以上を繰り返す
- チェックアウト
以降は手順毎の詳細や私が実際にやる際にポイントになると感じている点について触れていきます。
チェックイン
まずここで場の目的とゴールの共通認識を持ってもらうことを、期待値調整と併せて行います。ポイントとしては以下を合意してもらうことです。
- 全員それぞれ課題を持っている:課題を持っているのは自分だけではないという事実を認識する
- 時間は有限:参加者全員の全ての課題が解消できるとは限らないことを受け入れる
- この場の価値を最大化する:一部の誰かだけではなく、全員がなるべく価値を得られる場とすることを目指す
私はよくこんな感じにやります。
「みなさんおつかれさまです!さて、今こうやってみなさんが集まっているのは何故でしたっけ?」
「はい。みなさんそれぞれ疑問や懸念を相談したり議論して解消したいからですよね」
「ただこの時間内で全てを解消するのは難しいかもしれません」
「であればみなさんの多くが重要だと思えるものから順に解消していきませんか?」
「そうすることでこの時間をみなさん誰もが価値あるものとなるようにしましょう」
バックログ作成とカンバン用意
まずは3〜5分程度時間をとり、参加者に話したいトピックをふせんに書き出してもらいます。そしてその間にカンバンを用意しましょう。カンバンといってもシンプルに以下3レーンあれば十分です。括弧内は私がよく使うレーン名の例です。
- これからやるもの(Backlog)
- 今やっているもの(Doing)
- 終わったもの(Done)
時間になったら参加者には1枚ずつ交替でトピックを簡単に説明しながら”これからやるもの”に貼り出してもらいます。その際、他の参加者が自分と同じ内容のトピックを先に貼り出した時は自分のふせんをそこに重ねて貼ってもらいましょう。これを手持ちのふせんがなくなるまで繰り返すと、最終的に”これからやるもの”に一意の内容のトピックが貼り出された状態となります。
次に、貼り出されたトピックを優先順位で並び替えてもらいます。参加者には優先度ではなく優先順位であることを強調してください。併せて、もしトピックを追加したくなったら自由に追加して構わないという旨も伝えておくと良いでしょう。ちなみに私はこのようにお願いしてます。
「これらのふせんを話したい順番に並び替えてください。順番はみなさんの合意で決定してくださいね。話し合いでも投票でも殴り合いでも方法はお任せします」
「あと途中でトピックを追加したいと思ったら自由に追加してください。ただしきちんと優先順位で並べてくださいね」
これでバックログができあがります。
バックログをひとつずつ着手
バックログから優先順位の高いトピック(要は上から)をひとつ取り出し”今やっているもの”へ移動して議論を開始します。議論の時間は、参加者同士が話し合うことが主な場合は10分以内とすることが多いです。一方、私が質問に答えるような場合ならある程度時間をコントロールできるので制限時間を設けなかったりします。
そして議論が一区切り、或いは時間に達したら継続するか否かの多数決を取ります。せーの、でサインを出して意思表明してもらいます。
- Thumbs Up(親指が上):もっと議論が必要だ。継続しよう
- Sideways(親指が水平):どちらでもいいよ
- Thumbs down(親指が下):十分議論した。次へ行こう
継続が必要であれば再開してください。尚、制限時間を設けてる場合は開始時より少し短めにすると良いでしょう。一方、継続せずに次のトピックを進む場合は現在のトピックを”終わったもの”へ移動してください。
尚、バックログを並べ替えたりトピックを追加したいことがあればこのタイミングで更新してもらいましょう。ちなみに私は参加者自身による進め方の改善を促す意味も含めて、この時に以下のように見込みを伝えることをよくやります。
「このペースだとこのトピックぐらいまではできそうですね」(それで満足できそう?)
後はこれの繰り返しです。
チェックアウト
最後は5分程度を使ってチェックアウトをして締めくくります。私は議論の結果アクションプランが出たならそれの確認とまとめをしています。その他にも、この場についての感想やフィードバックを集めたり、或いは参加者同士の感謝の交換をしてもらっています。
まとめ
Lean Coffeeとスクラムをご存知であれば「Lean Coffeeをスクラムっぽく仕立ててるな」と思われたのではないかと思います。はい、ぶっちゃけて言えばLean Coffeeをスクラムのノリをちょっと取り入れてやってるだけです。ただこうするとコンテキストが揃いやすいので参加者もよりすんなりと入ってくれるんですよね。
というわけで「アジャイル、特にスクラムを実践している現場でアジェンダの無い相談会(のようなもの)を開きたい」時はこの方法がよくマッチするし、Lean Coffeeのメリットをそのまま享受できるのでおすすめですよ。
参考になれば幸いです。
参考
Lean Coffee : http://agilecoffee.com/leancoffee/