RSGTとSPaTと私

本文は Regional Scrum Gathering Tokyo Advent Calendar 2018 の13日目の記事になります。RSGT2019で「明日現場で使える!とにかく明るいScrum Patterns 活用ワークショップ」を(こっそり)担当する稲野です。ジョブは流しのアジャイルコーチです。

Regional Scrum Gathering Tokyo Advent Calendar 2018 – Adventar

昨日はRSGTの実行委員でもありomoiyari.fmのパーソナリティでもある横道さんの「RSGT のスタッフボランティアで体感した、スクラムの5つの価値基準」でした。理路整然としながらも温かみのある、とても良い記事でしたね!

その後に続くのはなかなかツラいものがありますが、今日は私が初期から関わっているコミュニティSPaT(Scrum Patterns Tokyo)が生まれたきっかけから果てはRSGT2019でワークショップを開催するに至るまでの経緯をふりかえってみたいと思います。

この記事を読んでScurmPatternsに対して興味を持ってくれたり、人の繋がりが生み出すドラマ(?)をちょこっとでも感じてくれたら嬉しいです。

SPaTが生まれたきっかけ

SPaTは約1年前に生まれました。全てはこの2017年10月に開催されたこのトレーニングから始まります。

スクラム上級コース

“Scrum Tuning by Organizational Patterns” by James Coplien in Tokyo on Oct 2017

私は「スクラム上級コースって何だろう?」という好奇心でこのトレーニングに参加しました。そして初めてScrumPatternsを知ったのです。

ScrumPatternsはスクラムの実践において起こりうる様々な課題とその解決法が表現されています。これを読んでみたところ自身の経験と符合して「確かに!」と頷かされたり、或いは「なるほど、その手があったか!」と新たな気付きをもたらしてくれたり、とわかりみと驚きの連続でした。

更には個々のパターンが紡がれて織りなすパターンランゲージなんてものも。もう知恵熱出るんじゃないかというほど面白く、とても楽しいトレーニングだったと記憶しています。

このトレーニングには先輩アジャイルコーチである木村卓央さんと、アジャイルひよこクラブというコミュニティの運営仲間である石井食品の石井智康さんとも一緒でした。2人もこのトレーニングにかなり揺さぶられたようで、帰り道に「俺らでもっとScrumPatternsを学んでみよう!」という話になりました。これがSPaT誕生のきっかけだったのです。

SPaT立ち上げ

その後2回ほど3人で集まり、どのように活動していくかを検討しました。その結果、コミュニティの形態はScrumPatternsに興味がありそうな知人を10人程度メンバに誘うのみで非公開とし、活動内容は参加者みんなでScrum PLoPに公開されているパターンをひとつずつ翻訳・ディスカッションして内容の理解を深めて行くこととしました。

これはSPaTが世に存在を明かされるとしてはまだ幼く、きちんとした成果物を用意できない状態で公開してしまうとScrumPatternsに関わる先人達に迷惑をかけてしまう懸念があるためです。故に仲間内での内々の活動という位置づけにしたのです。

活動についての検討あれこれ

何はともあれこうしてSPaTは2018年4月から月1回のペースで勉強会を開くかたちで活動開始となりました。

直面した停滞感とそれを打ち破ったScrumPatternsカード

とりあえず勉強会は当初決めた通り月1回のペースで開催していました。ただ3ヶ月ぐらい経つと、少人数のリスクでもあるわけですが集まりの悪い時がありリスケとなる月が出てきました。コミュニティを続ける上で大抵直面する最初の壁ですね。

そんな停滞感が漂い始めた時、RSGT実行委員でもある川口さんが持ち込んでくれたScrumPatternsカードがこれを打破してくれたのです。

ScrumPatternsカードとは1枚のカードに1つのScurmパターンが要約して記載されているものです。これは上述の「スクラム上級コース」のトレーナーであり、ScrumPLoPの中心人物でもあり、名著「組織パターン」の著者としても名高いJames O. Coplien氏が作成したものと聞いています。

氏は日本でCSM(CertifiedScrumMaster)やCSPO(CertifiedScrumProductOwner)のトレーニングを数多く行っているのでご存知の方も多いでしょうね。

ScrumPatternsカード(写真のものはSPaTによって和訳したものです)

ScrumPLoPで公開されているパターンは丁寧に記載されている反面、それに比例して文章としてのボリュームもあります。そのため1回あたり2時間程度の勉強会では1つのパターンすら終わらないこともあり、達成感が乏しいという問題がありました。それに対してこのカードのボリュームであればこの問題は解消できそうです。

バッチサイズを小さくして翻訳・ディスカッションというモブワークのフロー効率を良くしよう、と言ったところですかね。一方、記述が少ない分内容の理解が難しくなるかもしれないというデメリットもありますが、そこはメンバの知見やディスカッションで何とかする、と割り切ってもいます。

かくして「ScrumPatternsカードの方を翻訳する」と変化することによってSPaTは活気を取り戻し活動を継続することができました。

そしてRSGT2019へ

ScrumPatternsカードの翻訳・ディスカッションが段々進んできた頃、こんな提案が出てきました。
「これ(翻訳したScrumPatternsカード)をネタにRSGTのプロポーザル出してはどうでしょう?」
時はちょうどRSGTのプロポーザル受付期間の真っ只中。登壇を目指すということはSPaTが世に存在を明かすことでもあり、同時に恥ずかしくない成果物が求められることも意味します。とはいえ反対する人は誰もいませんでした。はい決まり。

「で、誰が代表してプロポーザル書く?」
「まだ自分でプロポーザル出してない人がいいんじゃない?」
「そうだね、誰かいる?」
「はーい」

挙手1名。はい決まり。笹さん、よろしく!
実は彼はその日がコミュニティ初参加でした。でもそんなこと、何の問題もありませんよね。

ちなみにSPaTというコミュニティ名が決まったのもこの時期です。キャッチフレーズは「あなたのお悩みをスパッと解決!」

そんな感じでささっとプロポーザルが作られました。ただ当初はワークショップを行う予定のメンバ全員を共同登壇者として名を連ねていたので、気がつくと名前の表示だけで溢れてしまいそうな状態に。

過渡期(ピーク時はここから更に増えた)


これでは一見しただけでは何なのかわからないよね、ということで最終的に笹さんと原田巌さんの2名というかたちに落ち着きました。併せてタイトルに「とにかく明るい」が加わり、更にタグも必要そうなものが追加されています。

最終形
充実のタグ群

そして11月、プロポーザル採択の知らせが!素直に嬉しい!

価値あるセッションを目指して

せっかく採択された以上は参加者が満足できる価値をきちんと届けたいところです。そのためにはセッションの流れやワークショップの設計を考えて行かなければなりません。ここからは月1回の翻訳ワークよりもこれらの検討の優先順位を上げて取り組み始めることとなり、それは現在も続いています。集まる頻度もだいたい月2〜3回ぐらいと増えています。

当初はFearless Journeyゲームのようなものをイメージしていたのですが、SPaTが達成したいことって何だっけ?とか参加者に持って帰ってもらいたいものって何だっけ?などを喧々諤々して内容がどんどん様変わりしています。一回でも集まりに行けない日があると置いて行かれてしまいそうになるぐらいの激しさです。これはみんな貪欲により良いものを目指していてる証左なのでしょう、きっと。

そして最近ではコミュニティメンバのツテを頼りに興味を持ってくれた人達の場で素振りも試しています。そしてそこで得たフィードバックでまた内容が変わったり。そんなこんなではありますが12月に入ってようやく最終形が見えて来た感じです。(そろそろ見えないとやばいし)

とはいえ来週の素振りでまたどうなることやら。でもこれだけ練っていけばきっと良いものに仕上がるはず!

おまけ:和製アレクザンダー爆誕

「注目してもらうためにもキャッチーな何かが欲しいよね」
「パタンと言えばアレグザンダーですよね。だから和製アレグザンダーってのは?」
「おっ、いいね」
「え?アレグささンダー!?」
「和製アレグザンダー!アレグ笹ンダー!」

満場一致。はい決まり。なんだこの大喜利。
どうやら笹さんがプロポーザル出すことになるのは運命だったようです。

最後に

きっかけは「スクラム上級コースって何だろう?」という好奇心。
好奇心によって得られたScrumPatternsという学び。
学びを偶然同じ場にいて共有することができた数名の仲間。
仲間と手探りで始めた小さなコミュニティSPaT。
SPaTが動き続けたことで少しずつ広がった人と活動の幅の変化。
変化によって導かれたRSGT2019への登壇という新たな目標。
新たな目標の成果として創られていく新たなワークショップ。(イマココ)

去年の今頃はこんな展開になるなんて全く思ってもいませんでした。ScrumPatternsの面白さ、人の繋がりの力、どちらもやばい。いやー本当に感慨深いです。ScrumPLoPの叡智と、SPaTに関わってくれた方々の尽力にただただ感謝!

さて、RSGT2019開催まで1ヶ月を切りました。

あの熾烈なチケット争奪戦を勝ち抜き、更にScrumPatternsって面白そうだなと興味を持っているそこのあなた、「明日現場で使える!とにかく明るいScrum Patterns 活用ワークショップ」でお待ちしています。素敵なアハ体験がそこにはきっとあります!

そしてそんなあなたもそうでないあなたも、みんなでGatheringを楽しみましょう。あなたに新たな展開をもたらす可能性がRSGTにはきっとあります!

明日のアドベントカレンダー

明日はRie Chonan Moribeさんの「何か書きます!」です(12/12 12:00現在)

何を書くんでしょうね?気になりますね!

RSGTでは「プロダクトオーナーは突然に 〜メカ屋出身プランナーと奇妙な冒険〜」という面白そうなテーマで登壇されることだし、期待して間違いないと思います!

オラ、ワクワクしてきたぞ!