本文は ギルドワークス Advent Calendar 2018 の15日目の記事になります。
私はアジャイルコーチとして仕事をしており、ある現場で今年の2月頃からギルドワークス中村 洋さんと一緒に仕事をしています。つまり2人の外部コーチが同じ現場に入っているかたちです。外部からのコーチ1人、社内のコーチが1人ならさほど珍しくないかもしれませんが、外部からのコーチが2人というのは珍しいと思いませんか?少なくとも自分にとっては初めての経験であり、いろいろと学びがありました。これを「ペアコーチング」と(勝手に)呼んでいます。この記事はそのペアコーチングについてになります。
ペアコーチングを始めた経緯
ある時中村さんに「事業を成功させるためにScrumを導入して取り組みたい、そのコーチをお願いしたい」と仕事の依頼が届いたらしいです。具体的にはその事業に関わる2チームがScrumをまだ始めたばかりなので、しっかり実践できるようにコーチングしてほしいと。ただ中村さんは売れっ子なので2チームを見るほど身体が空いてません。ということで、「一緒にやってみない?」と誘ってもらったのがきっかけになります。
当初はそれぞれが各チームを見るかたちで始めました。中村さんがチームA、私がチームBという感じですね。ただ両チームのスクラムイベントはそれぞれ別の曜日だったので、じゃあこの曜日なら私はチームAのスクラムイベントを一緒に見ることもできるよね、と共同してコーチングするのを試してみました。
というわけで最初からペアコーチングを狙っていたわけでもなかったので、偶然の産物とも言えるかもしれません。でもやってみたら「何これいいじゃん」と。それからは状況に応じて別行動することもありますが、基本的にはペアコーチングをしています。
ペアコーチングのメリット
お互いのやり方を観察できる
コーチってのは十人十色で、コーチングのスタイルも人それぞれです。目指すところは同じだとしてもアプローチや進め方はコーチによって様々だったりします。コーチングとしての王道はあるのかもしれないけど、絶対の正解なんてきっと無いのだろうとも思います。そしてコーチは現場では1人であることがほとんどです。つまりコーチが他のコーチのやり方を知る機会って現場ではあまり無いんですよね。これが現場で見れるってのは貴重な機会なわけです。自分にない技を盗み、引き出しを増やす意味で他のコーチを現場で観察できることはコーチ自身の成長において非常に有意義なのだと感じています。
状況判断やアイデアのすり合わせができる
コーチはその場を観察し、状況に応じて発言したりと行動を起こします。つまり即興プレーの連続であり、状況判断の連続です。とはいえコーチも人の子です。常に正確な判断をし続けたくはあるけど、時にはちょっと悩む時もあります。そういう時、自身の状況判断やアイデアのすり合わせができる相手が隣にいると妥当性の確認、壁打ち役としてとても頼りになるんです。バディという表現がしっくりくる気がします。もしくは相棒とか相方とか。
協同することで相乗効果を出したり相互補完ができる
上述したとおり、コーチは基本的には1人なことが多いです。なので自身の行動に対するフォローができません。自作自演な行動をしても相手はしらけてしまいますよね。その点、ペアだとそれができます。例えるなら子育てにおける父親役と母親役をそれぞれが担う感じです。父親役が子供を叱りつけ、シュンとなったところを母親役がフォローする。いわばアメとムチです。もしくは父親が叱った真意を母親が子供にそっと解説する。そうすることで子供がグレる可能性を減らしつつ、すくすく成長する可能性を高めるのです。
ペアコーチのデメリット
相乗効果が裏目に出るリスクがある
ペアコーチングのメリットとして相乗効果が出せることを挙げましたが、ちょっと間違えてしまうと悪い相乗効果が出てしまうことがあります。先ほどの例えで言うと、子供が父親からも叱られ、更に母親からも叱られるケースです。精神的に追い詰められた子供はもしかしたらグレてしまったり、自信を失ってしまうかもしれません。場合によっては敢えて両者で叱ることが必要な時があるかもしれませんが、悪い相乗効果にならないように気をつけておくべきかと思います。
同じ考えだった場合に我慢が必要な場合がある
あるシチュエーションにおいてコーチ両者が同じ反応をし行動しようと思った場合、敢えて片方は自身の行動を我慢した方が良い時があります。これは先ほど触れた相乗効果が裏目に出るリスクに繋がるからです。父親も母親も叱りたい気持ちだったとしても、母親役の場合はちょっと我慢しておいた方がバランスが保て良いことが多いんじゃないかと思ってます。
コストがかかる
まぁコーチが2人ですからね…
とはいえコーチはそれ以上の価値を提供できるよう頑張ってくれるはずですよ。
まとめ
ここまでつらつらと書いていたところでふと気づいたことがあります。
XP(eXtreme Programming)のプラクティスのひとつに「ペアプログラミング」(通称:ペアプロ)があります。ペアコーチングというネーミングはペアプロになぞらえたものですが、よくよく見直してみるとペアプロのメリットやデメリットなどの特性においてもペアコーチングのそれと大体一緒なんですよね。つまり共同作業の有効性はプログラミングに限らずコーチングでも同様だ、ということでもあると思います。
私の見る限りなので多少偏見もあるかもしれませんが、ペアプロはプログラミングの世界ではそれなりに認知・普及しています。その有効性が認められた証左と言えます。ということは、それと同じ特性のあるペアコーチングだっていいものだ、もっと当たり前になってもおかしくないんだとも言えるんじゃないでしょうか。自分としては、そう信じてこれからも取り組んで行きたいと思ってます。何より楽しいし(ここ大事)
ということでペアコーチングお勧めです。コーチをする機会があれば是非お試しあれ!